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桐島、部活やめるってよ

先日、某氏と何年かぶりに出会った時に、少しだけ話題にあがった「桐島、部活やめるってよ」を見てみて、65パーセントくらいドキュメンタリータッチにして、学校と世界の断片をとろうとしたガス・ヴァン・サントの「エレファント」(映画は大してみないんですけどね、なんかこの映画好きなんスよ)を、もっと構造的にシナリオ整えたみてーな映画だなーと、冒頭の長回しと、細かい自然なセリフのやりとりでごくナチュラルにがっちり存在する覆しようの無い「この世の仕組み・冷たい方程式」を表現していく様子を見ながら思っていたのですが、そんなディストピアとしての学校生活の中で、映画部の活動風景だけがまるっきり青春映画のように美しいのは、なんの意図なんスかねえ。
一見、ヒエラルキー最下層に見える映画部のみが、実は、特権的にファンタジーなんですよねえ。

失恋すら、映画のように美しい。

思うようにいかない世界の不条理さがひたすら描かれる中で、この明確にわざとな、「だめだめな連中が、汗まみれで、一つのものを作り上げていく」というプロットのべったべたな青春映画的手触りの作り物の美しさ。あの作り物の美しさが、この映画を見やすく面白くしているのは確かだけど、もっと別の意図もあんじゃないのかなあ。映画部が作中で作った前作もラブロマンスだったらしいし、だいたい現実で考えたら、映画部の部員数、多すぎない?
この映画で唯一の決め台詞らしい決め台詞、「それでも、この世界で戦っていかなきゃならないんだ」云々が、現実の内部からではなく、映画世界という向こう側からだから、あっち側のフィクションからだから、現実っつーこっち側に訴えかけられる力を得られる鼓舞の声であり、この、現実では薄っぺらいうそ臭さしか感じられない、言葉にすればやすっぽすぎるエールを成立させるために、映画部は徹頭徹尾、ドキュメンタリー調のあの映画の中で異質に、足を片ッぽフィクションにつっこんだ存在でなければならなかった、ということなんだろうか。
現実に対して、映画はなんか言うことができる、ってことを証明したかったのかねえ。

そんで、あの神木隆之介が演じてる映画部部長から主人公補正、映画的補正を剥ぎ取った存在が、ラストのラストで野球部のキャプテンの口から吐露された、ショボさ・怨念・未練・その汚い美しさだよなあ…。などと。
あのキャラすげー重要だったんだなあと最後の最後でわかるのが、憎い。

あと、映画部副部長いいやつ。ほんといいやつ。「いつまでも友達でいよう」コーナーに出てきていいくらいいいやつ。ああいうやつがすぐ隣にいるってことが、映画部がフィクションであることの証左でもあるのだけど。あんな自分に都合がいいだけの人間、現実には、いません。嘘の塊。
ああいう友人が学生時代にいれば、僕はもう少しだけ、良い今にいたかもしれない。ifなんかこの世にないし、きっとその可能性を自分自身の手で拒絶していたのだけれど。
もじゃもじゃは殴る。

この数年、ほぼなにも映画を見ずドラマを見ず本を読まず外に出ず、ひたすら絵だけ描いてきた結果、なにひとつ手の中に残らなかった後、という今のこの時期に見た、この、二年前に公開された映画は、ちょっとブログに感想書いちゃうくらいには、面白かったです。葛藤と不安と空虚と同調圧力の映画だったな。孤独はなかった。この映画を見た後、映画の感想よりも自分が登場人物の中のどのタイプだったかを語り合うのが、よくあることのようですが、この映画の中に、私はいませんでしたね。昼休みに、便所でメシ食って、ナディアをバックから犯す妄想でオナニーして、あとは寝てるやつ、映画に出てこなかったもん。

なんか、中島みゆきの「Tell me sister」も思い出しました。
「私にないすべてを持って、『なにもない』と未来を見てた」という、実在するのかもわからないパーフェクトな彼女と桐島はかぶる。

今、濡れた障子紙みたいにぺらぺらの希望を投げかけられて、どうやってすがればいいのか。
「夢と狂気の王国」もそのうち見るよ。

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プロフィール

佐々木バレット

Author:佐々木バレット
佐々木バレットと申します。舟名義で活動することも。
しばらくお休みしていましたが、マンガ活動再開しています。

現在、主にコミックMateで活動中。
またコミックウォーカー上で、舟名義でホラー漫画「カタリベ」の漫画も担当しています。

HPはこちらになります。
You Look'in 華々しき Rock'n Roll WOW!
また、拙著『おさなブライド』は、現在電子書籍版がDMMなどで配信されています。

ご連絡いただく際には、下記あて先の「$」を「@」に置き換えたメールアドレスにお願いいたします。
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