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「この世界の片隅に」について気づいたこと

先に発売されたマイマイ新子のBDに収録されているこの映画のパイロットフィルムを見て、あらためて思ったこと。
一画面に同居する無数の異なる時間尺度と、ばらばらのものの動きが隠喩的に連動することによる同居感が、この映画のキーなのではないか、とかそういうことです。

真ん中とか焦点というレンジがないということ。
誰かに分かるように文章をかいていないので、誰にもわからなくていい。

風立ちぬ見る見る

今更ですが、風立ちぬを見ました。
うわ、なんで自分この作品を今までスルーしてたの? 面白すぎる。

正直、宮崎駿作品は、いまいち乗り切れない作品が多かったのです。
みんなが騒ぐことが多いラピュタやカリ城はどうしてもノリのよさ以上の面白さを感じられず自分にはあわないし、ポニョなんかは熱病にうなされながら見るぐでんぐでんの悪夢として見るにはいいけど、面白いかといわれればうーんだし、ナウシカの漫画くらいしか心底面白いと思えるものがありませんでした。
千と千尋の神隠しだけはBlu-ray買いましたが、千尋がエロ過ぎるAVとして買ったものですし。

風立ちぬは良かったなあ。人物の内面のいびつさと絵のいびつさが、がっちり握手してて、どんどん奥行きが見えてくる。
二郎の人間性がサイコパスっぽくて恐ろしい。
絵の華麗さが、メガネ越しにしかものが見えない呪いをかけられた二郎のキャラクターとがっちりフィットしてて、美麗な絵の後ろにある、視界から切り捨てられた本当の不気味さがどんどん怖い。そして美しいものしか見れないことがひどくもどかしい。本当にもどかしく、でもしゃーないじゃん宮崎映画だしという諦観すら感じる。それがそのまま二郎の見えている視界に繋がっている、というのは、不思議な体験でした。マルコヴィッチの穴みたいなもんで、二郎の中に入ってものを見ているような。

一見ひたすら美しい菜穂子から垣間見える、計算高い魔物のようなあざとさがちらちらちらちら見えるのとか、たまんねえ。
結婚シーンの美しさなんかあなた、あれ完全に魔性ですよ。
サナトリウムから抜け出して列車に乗ってるシーンとか、黒川邸から抜け出すシーンで、コートを着た菜穂子の横顔が何度か写った覚えがあります。
そのカットって、多分、女性にも老婆にも見える有名なトリックアートを意識したものではないでしょうか。美しい少女と醜い老婆の二面性を持っているのが菜穂子なのだというサインだと思います。
菜穂子と二郎の関係については、「純愛」なんていうけどさ、二人がぴったりフィットしているんじゃなくて、かみ合ってないのがいいんだよなあ。

カプローニとカストルプの完全に悪い魔法使いな感じもいい。うさんくせえうさんくせえ。
イタリア人とドイツ人は三国同盟という美しい呪いに日本を引き込んだ悪い奴だ、などということではないのでしょうが。

一回目の鑑賞では、「なんかひどくひっかかりはあるけど、クリアに見えない」というまさに度の合わないメガネを掛けさせられたような感想でしたが、二回目からがりがり読んでいける。ほんとなんで今まで見てなかったのかなあ。

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惜しむらくは、岡田斗司夫の解釈を、ニコニコ動画で一回目鑑賞後に一度見てしまったことです。
これによって、だいぶ鑑賞の方向性がそっちにひっぱられてしまって、もっと自分で租借できるはずだったのにという悔恨があります。
なんとかこの呪いから離れて、自分なりの解釈を見出そうとあがいています。うーん、これもメガネだ。
ラストに関して岡田さんが示した「菜穂子が寝入った二郎のメガネを外したのは、彼の素顔が見たかったから」「菜穂子の死が力を与えたから、最後にだけ飛行試験が成功したのだ」という読みからは、なんとか離れて違う見方ができました。

菜穂子がメガネを取ったのはあなた、あれは「飛行機じゃなく私を見て」、「美しいだけじゃない私を見て」というエゴから、カプローニが二郎に掛けた美しいものしか見えない呪いを、菜穂子が解いてしまったシーンですよ。だから飛行試験が上手くいったにも関わらずサナトリウムがあるであろう山に気を取られ、で、その結果見えてしまったのが、死屍累々の太平洋戦争の末路ですよ。僕はそう解釈しました。
成功した瞬間に、自分が造っていたものの正体に気づいてしまうというのは、怪物が目覚めた瞬間にその醜さに気がついてしまうヴィクトル・フランケンシュタインとちょっと似ている。

この映画は、カプローニ、カストルプ、菜穂子という三人の魔法使いと、二郎にかけられた美しいものしか見えない呪いをめぐる話であり、現実的な話のようでいながら非常にファンタジーで童話チックな骨子が隠れているのだと思います。

まだいじめっ子から下級生を助けるくらいの正義感があった二郎に、美しいものしか見えない非人間的な呪いをかけるカプローニ、
結局はあまり上手くいかないものの、飛行機よりももっと美しいものとして、運命の恋へ誘惑するトスカルプ(だから彼は国策を忘れさせる思想犯として追われるのではないか)、
呪いを解いてしまう菜穂子

そして、魔法が使われるたびに、風が起こる、というのが「風立ちぬ」というタイトルの意味なのではないかなーと今は考えています。

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そういえば以前、風立ちぬ制作時に、片渕監督がゼロ戦と堀越二郎に関する資料をジブリに持ち込んだら、けんもほろろに扱われたというエピソードを見かけました、それを読んだときは「なんでなのかなあ」と疑問だったのですが、作品そのものを見れば、理由は一目瞭然でした。
だって現実とか史実を描く気ゼロだもんなあ。

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あとリバイバル上映していた不思議惑星キン・ザ・ザを鑑賞。
小汚いおっさんしか出てこないのに、この人たちがひどく可愛く見えてくるへんな映画でした。
もういっかい見たいなあ。

最近の生活

作画作画そして作画。
借りてきたコッポラのドラキュラが見れないぃ。

この世界のどぶの底

この世界の片隅にを観て、昨日からずっと落ち込んでいる。
最初は高揚して、触発され、何か今までの殻をやぶったものが作れるような気になっていた。だが、時間とともに、どんどん気分が暗くなっていった。
突きとばされた気分。
抗不安用にもらった頓服のセパゾンがどんどん減っていく。
人としての欠落を怠惰さを叩きつけられた様な気がしている。
ぼくはコミュニケーションという型をこれまで何度も獲よう得ようとあがいて、ついには何も手に出来なかった。
つねに誰かを憎んでいるし、なぜか定期的にすべての人間関係をご破算にして遁走してしまう。
笑うセンスも遊ぶセンスも摩滅してしまった。
手をつなげない。
ふつうというちからを持ちたかったよ。

■11/21追記
映画の感想を検索していて、片淵監督が「「配偶者がほしくなる映画」を目指しました。」とツイートしている見つけました。
多分、ただたんに「すずさん夫婦の仲がロマンチックでほほえましい」というだけでなく、相手の家の家族や親類縁者、近所の人間関係、育った土地、見てきた風景、はては彼(彼女)が産み落とされ、その人として成立するまでの背景にある膨大な千年万年の歴史まで視野にいれて、それまで他人であった相手とともに、その巨大な輪の中につながることまで意味しているのだと思います。(言語化すると大仰ですが)。
少なくとも僕がこの映画から一番強く感じたのは、人と共にいられることの幸せであり、人と人の間だから生まれるユーモアの強靭さであり、だから取り返せない悲しいことを抱えながらも今日を生活していける、ねばりづよさでした。家族になれる、そこに踏み切れる、ということ。血は繋がっていなくても、一枚の布を分け合える人がいる。

自分はもう、そういう世間の輪から蹴りだされて、落ちこぼれている、という風に感じ、ほぼ諦めている人間です。
だから、尋常じゃない出来のあたたかい映画にもかかわらず、ひどく落ち込んだのだと思います。
結婚なんてできるわけねえ。あたたかすぎるし、強靭すぎるんだよ。

塩分がもったいないから、バケツいっぱいの海水をそろそろとこぼさないようにする

この世界の片隅に、見てきました。
もう、僕程度がなにをいってもペラくなるので、沈黙をもって感想に変えます。

町山智浩が絶賛したり、著名な漫画家さんたちが絶賛したりしているので、もう今更自分のような市井の一人が宣伝、などとでしゃばる必要はないでしょうが、一応、クラウドファウンディングに参加したり、マイマイ新子の時最初期にこのまま埋もれちゃいかんと言ったうちの一人だったりして、はばかりながらも僕は「俺たちの片渕須直監督」と思っている人間なので、この作品がヒットすればいいなあと願っています。

この人の作品が伝え、訴えるような人間にはなれなかった出来損ないのクズだけど、願っています。


プロフィール

佐々木バレット

Author:佐々木バレット
佐々木バレットと申します。舟名義で活動することも。
しばらくお休みしていましたが、マンガ活動再開しています。

現在、主にコミックMateで活動中。
またコミックウォーカー上で、舟名義でホラー漫画「カタリベ」の漫画も担当しています。

HPはこちらになります。
You Look'in 華々しき Rock'n Roll WOW!
また、拙著『おさなブライド』は、現在電子書籍版がDMMなどで配信されています。

ご連絡いただく際には、下記あて先の「$」を「@」に置き換えたメールアドレスにお願いいたします。
sasakibullet$mail.goo.ne.jp

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